東京写真館

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Nikon DLシリーズの発売中止に見るデジカメ市場

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2016年の2月に発表されたNikonのデジカメDLシリーズの各機種の発売の中止が、2017年2月に発表された。
2016年6月に発売予定とされていたが、画像処理用ICに不具合が見つかり、それ以降ずっと発売未定とされていた。

 


単に画像処理のICに不備が見つかり、開発・製造の進捗状況にもよるが1~3ヵ月もあれば修正したものが出てきそうな気がする。それが、1年経って発売を中止した理由というのは何なんだろうかと考えてしまう。

2016年4月14日、熊本地震が起きました。
最大震度7の大地震が熊本にあるソニーのセンサー工場を直撃します。
ソニーのセンサー工場では、ソニーのデジカメだけでなく、各カメラメーカーへ提供されるセンサーも製造しています。

ソニーがだめなら他社から仕入れたらいいではないかという声もあるでしょう。
開発済みのカメラであれば、センサーが変われば、DSP(画像処理)まわりを開発しなおすことになります。基盤周りを作り直すこととなりますが、不可能ではない。
ですが、全く同じ性能のセンサーを仕入れられません。すでに発売済みの製品は性能が変わってしまいます。
大きな部分に変更が加わるので、開発に半年から1年かかれば、当初のスペックでは市場ニーズに合った製品を出せなくなる可能性があります。

カメラの基幹部品であるイメージセンサー(CMOS、CCD)を製造できるメーカーは数社ありますが、ソニーのシェアはトップ。
更に言えば、高画質でカメラ用にセンサーを他社へ提供できるメーカーは、ソニーしかないとも言えます。
カメラ業界でセンサー製造のソニーを外しては語れないほど大きな存在となります。

当然、カメラの基幹部品であるセンサーの提供が滞れば、ソニーNikon等のデジカメで供給不足や発売延期が起きました。

ソニーの製造工程が10月に完全復旧されたようですが、それまでは供給の遅れや新製品向けの製造も遅れが出ていたに違いありません。

2016年9月は2年に一度のフォトキナが開催。
フォトキナはヨーロッパで行われる大規模な写真関係の見本市。
カメラメーカーにとってかなり重要視しているイベントで、各メーカーから年末の商戦に向けて発売される新製品が積極的に発表される場となります。

どのメーカーもそんな発表はしていませんが、生産工場の被災の影響で現行品の供給はもちろん、新製品の発売・製造スケジュールもつかないままだったに違いありません。
現にフォトキナではペンタックスからは、新規の一眼レフの発表がありませんでした。
コンデジ部門はやらなくなったペンタックスにとって、メイン製品の一眼レフの新作がフォトキナに向けて発表できなかったのはかなりの痛手だったに違いありません。

更に、市場の動向に変化が。
Nikon DLシリーズは1型のセンサーを搭載した、高級志向のデジカメ。
デジカメ市場の売り上げが下がりつつある中、予定から半年以上経過してしまったこのカメラでは利益が出ないと判断して、販売の中止が発表になりました。

 


製造工場の復旧途中で、途中までできていたセンサーを使える施設で仕上げて徐々に供給はしていたそうですが、製造予定を大きく下回ったはず。
そのおかげで、全くカメラが提供できないという最悪の事態は回避できたようですが、当初の販売目標は大きく下回ることに。
震災の影響でソニーだけでなく、ソニーのセンサーを使っているカメラメーカーは大きな影響を受けることになりました。
単なる市場縮小という事ではなく、供給不足で売り上げが減り縮小に向かったというのが正しい見方だと思います。
事実、2016の年末には生産が回復して、売り上げが上がっています。
ソニーへの一極集中がカメラ業界へ大きな痛手に繋がったという事になります。